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農園リストランテ

ヤギ日記~ほぼ日刊~

このたび「ヤギ日記」のコーナーをつくってみました

ヤギ飼いの日常は、ひとつひとつは瑣末な、さまざまな出来事の連続体と云えます
そのときどきの様子を日記調にして臨場感をもってお届けすることで、
これからヤギを飼ってみようとする方に肌感を持って欲しい
と思ったのです
また、既にヤギを飼っていらっしゃる方から「そうなんだよお」という
あるある感を共鳴して欲しい
と思っています

大事件はきっとありません
本当に雑多で小さな短編になるでしよう
良くもまあ、これだけいろいろな出来事が日替わりで起こるものだと
感心していただけると思います
ほぼ日刊の気概で、続くところまでやってみます

ヤギという動物との向き合い方などについては「私のヤギ飼い記」にまとめてあります
また、ヤギの飼養に必要な知識や技術的なことは「ヤギ飼いFAQ」に整理しました
そちらも参考にしてください

大雨で崩れた砂土のどかし作業は、名乗り出てくれる方があらわれ、この日曜に行うことになった。ありがたや。働き者の若者をひとり帯同するそうで、しかもその若者はちょっとのバイト料、ご本人は搾りたてのヤギミルクが対価で十分という涙が出るようなお申し出であった。いつぞや書いたヤギバターの方である。そのミルクでさっそく実験するんだという。ミルクでよろしければ、喜んでご提供します。
今朝は娘たち一家が来るので早めに搾乳して空港にお出迎え。なに、孫目当てですよ。賑やかになった。
さて、ルナのことである。
ルナはアルバイン系の黒ヤギ。「系」と称するのは100%純種ではないからである。そもそも日本ではアルパインの純種はいないんじゃないかな。ザーネン、シバ、トカラくらいではなかろうか、せいぜい。登録して管理しているのはザーネンだけである。
私の店の看板には白ヤギと黒ヤギが仲良く並んでいる。このデザインは開店前から決めていたものであり、つまりヤギを飼い出すよりもこちらのデザインの方が古い。最初のヤギは白ヤギ・ザーネンの2匹だったので黒ヤギはいなかった。このままだと「看板に偽りあり」になってしまう。ほうぼう探して、ようやくみつけた真っ黒黒ちゃんだった。茨城のつくば市まで軽トラで迎えに行ったことを昨日のように思い出す。
種の個性なのか、個体の個性なのかは分からないが、ルナの方がザーネンより勝ち気である。今、4匹のチームのリーダー格である。この春で8歳。最年長でもある。
黒褐色の活発な女の子の名前であるBrunaから名づけた。ついで眼の輝きがお月さんのようだと思ったこともある。 
ルナだけは人工授精していない。というのは、日本では人工授精で取り寄せできる精子はザーネンだけなのである。せっかくだから同じような種類同士で交配させたい。そういう思いがあり、アルパイン系のオスを探して自然交配させている。東日本で、また、この秋田でアルパイン系のオスをお持ちの方は非常に少ない。車で高速に乗り、2時間ほどもいかないとならない、往復して1日がかりの行程である。ところが、発情が私や店の都合の良いときにくるとは限らない。忙しくて行けなかったり、おりからの大雨で足止めをくったこともある。このところ発情が不明瞭にもなっている。そういうことが重なり、この春の出産を断念した次第です。
ルナは黒ヤギだが、有色ヤギはいろいろな色の遺伝子を持っているので、どういう色のヤギが生まれてくるか、産まれてみないと分からない。出産するには年齢的にそろそろラストチャンス。この秋は挑戦してみようかな。
今日のヤギ時間:トータル4時間30分

夜半に激しい雷雨があって、裏山の砂を随分流し落としてしまった。日照りで裏山の牧草がダメになり、地肌が露出してしまったので、崩れやすくなっている。ヤギ小屋の一部が崩れてきた砂に埋まってしまうのでどうにかしないといけない。つまり、この砂をすくいとって、どこかにどけないといけない。さて、これは重労働だぞ。どうしようか、考えよう。
現在、搾乳はリンとメッコの2匹から行っているが、牧場には4匹の成体のヤギがいる。すべてメスである。残る2匹はなにをしているか、というと「なにもしていない」。要するに、昨年の秋に受胎することができず、この春の出産を見送った2匹である。
まず、若いヤギの「いちぢく」、リンの娘である。2歳。昨年、人工授精がうまくいかず、とうとう懐妊しなかった。この子は昨年、発情の仕方がおかしかった。通常の発情は40時間程度続いた後、収まって、その3週間後にまた来る。これを翌春前まで繰り返す。受胎できれば発情はとまる。ざっくりこういう流れになる。ところが、昨年のいちぢくの場合、最初の発情が収まった10日後に発情らしいものが来る。そして3週間後にも来る。ホルモンのせいだと思うが、このようにふたやまできるという妙なものだった。最初の山が本発情だと思って精子を取り寄せたが外れた。そのうち、発情シーズンが終わってしまい、人工授精が不発に終わってしまったのである。こうしてうまくいかないなんてことはヤギを飼い始めて初めてのことだった。いちぢくは一昨年は一回で受胎しているから、ホルモンの働きが異常な個体なんてことはないと思うのだが、出産していないにも関わらず、乳房が張っていたので、敏感な体質なのではあろう。今年はどうなるか、要観察、要チェックの身分だ。この数年、秋の様子がおかしい。ヤギの発情を見極めるのが、年々難しくなっている。今年はどうなるか。頼むよー、という気分でいる。いちぢくはリンの後継者として期待して残した子である。残すと決めたとき、名前をつけた。庭にたくさんのいちぢくが成っていた。
もう一匹はルナという黒ヤギだ。この子の事情はまた違う。明日以降の説明にしよう。
今日のヤギ時間:トータル4時間

店は今日から遅い夏休み、天気は夕方から不安定だったが、身も心も軽やかである。昨日から子ヤギがいなくなったので、メッコのお乳が張って搾り甲斐があった。今はこの子とリンの2匹からだけ搾乳しているが、この時期になっても日に4リットルずつは泌乳するスーパー母ちゃん同士である。泌乳4リットルということはふたりで6匹分の活躍をしていることになる。
手搾りなので握力が要る。1匹につき500回以上は握って、離して、を繰り返す。それを朝夕だから、結構な筋トレである。春から秋は腕の筋肉が発達する変な野郎なのである。
リンの母親も優秀だったが、お祖母さんが凄かった。性格は凛として勝ち気で、賢く、グループの長だった。リンは産まれて数ヶ月のときに前足を骨折している。成長著しい時期なので、獣医の指示に従い、添木をせず消炎の塗り薬と伸縮の包帯だけで治療し、人工哺乳と離乳を介添して治療・育児した。数週間で骨折は完治したが、limpと名づけた。びっこちゃんというような意味であり、これがもとでリンになった。私は子ヤギには名前をつけない。情がうつるので、里親さんにお願いしている。命名した時点でこの牧場に残すと決めたわけである。お祖母さんに顔立ちまで似て、ミルクもよく出してくれる。リンの恩返しと呼んでいる。ミルクの女王と妻は呼んでいる。長生きして欲しい。
店が休みなのだから時間に余裕がある筈だが、今日はヤギの世話もルーチンだけで特別なことはしなかった。そのお陰でのんびりできた。明後日からは娘夫婦が遊びに来る。良い休みになりそうだ。売上を集計してみると、コロナ禍の前に戻ったような数字だった。忙しい、忙しいとぼやいていたのは、体力が衰えたせいではなく、真っ当な感覚だったわけだ。良かった。まずは日常を取り戻そう。
今日のヤギ時間:トータル4時間

暑い日が続く、これが残暑というやつなんだろう。それでも昨晩はエアコンを止め、窓からの風のそよぎで心地よく寝れた。コオロギの鳴き声も子守唄だった。みちのくの片田舎に住む特権かな。
今日はDonnaDonna。2匹の子ヤギがMワイナリーさんに引き取られていった。なかなか捕まらず、20分ほども私とワイナリーの方、計4名で大捕物帳を演じた。大暴れして連れて行かれた子ヤギだが、人に懐いていくのは、実は今からがチャンスになる。親の存在から離れるので人を頼らないと生きていけないことを悟るようになるからだ。可愛がってください。
Uさんも立ち会いに来られるようお誘いしたが、他の牧場に行ってみると言う。いろいろ見て聞いて視野を広げるのは良いことです。
これでこの春の子ヤギたちはすべて里親さんのもとへ行き、4匹の大人のヤギだけが残った。淋しくなったなというより、ホッとした感じだ。それは親ヤギも一緒で子育ての緊張から解放される。例年そうだが、面白いもので、子ヤギがいなくなると飼い主に甘える表情になる。親から飼いヤギに戻ったということなのだろう。
子ヤギが離れるのは例年より2が月ほども遅い。ようやく本格的に搾乳できる。発情も直に始まり、来春の出産の準備がもう始まる。なんだか目まぐるしい。 
少し落ち着いたら新しい里親さんでの様子を見に行かねばなるまい。大体1週間ほどで落ち着いて、腕白・お転婆ぶりを発揮し出すと思う。その頃に。
メッコの血乳は回復した。立ち直りが早い。これからたくさん搾れる。嬉しい。
フン籠のフンが一杯になったので、堆肥場に捨てに行った。週に一度のペースである。ついこの間までは午後の7時でも明るい空だったが、だいぶん陽が短くなってきた。牧場に戻って、電灯をつけようとしたら充電切れ。追加充電の間、作業はストップだ。最近、クマのことが気になるので、用心のため、豆灯を一晩中つけっぱなしにしている。毎朝、充電をしなければならなくなった。小さいひと手間が増えた。
Y種苗さんに牧草の種を注文した。裏山が日照りですっかり焼けてしまったので、4kgの種を蒔くことにした。来月になったら、雨が数日降りそうな頃を見計らってやろう。
モミガラはどうにかみつかりそうだ。農家の方のものを分けていただくので、細かい調整が要るが、まずは良かった。頃合いをみて、床を綺麗にしよう。
ヤギを飼うことは家事と似ている。平々凡々、つまらない変化のない毎日に見えるかも知れないが、そんなことはない。それどころか起伏に満ちてなにが起こるか予測不能、昨年と同じことを繰り返すようで二度と同じことなどない。
明日から6日ほど、店はお休みにさせていただく。私たちの遅い夏休みだ。
たまるか〜!
今日のヤギ時間:トータル7時間

空飛ぶヤギの続報を。長文になる。
まず、私ごとで恐縮なのであるが、企業勤めの現役時代、私はお客さま企業のITシステムの設計責任者であったが、営業の連中からは、みんなに無理だと断られたら○○のところへ行け、と言われていた。○○とは私のことです。世の中には道理というものがある。一見できないと映るものにも一筋の道はある。ただ、一歩でも踏みはずせば奈落の底に落ちてしまうので、そんなリスクの高いものは阿呆でない限り引き受けはしない。その阿呆であったわけである。たった一筋の道ではあるが、そこを曲芸的にミスなく渡っていけば向こう岸に行ける。例えば、フランスの片田舎の最新工場にFAを入れたり、体制瓦解直後のモスクワにNOTESサーバーを導入したり、電気もなにもないイラクの砂漠の真ん中に基地システムをつくったり、そういうことをしていた。そのための無邪気さと大胆さと繊細さを持っていたつもりである。「曲芸的にミスなく」なんて神業はできっこない。チョンボして奈落の底に落ち、そこから這い上がり、ということをしてきた。そんなこともあって「無理」の二文字を安易に使う輩は大嫌いである。
しかしなあ、しかし、この空飛ぶヤギは、その道筋がみえないんだなあ。リスク云々ではない。やるための道筋がない。
Uさんは、どうしても物理的に空を一緒に飛びたいらしい。秋までにヤギの等身大のオブジェをこさえて実験するそうである。どうして実際に空を飛ぶことにこだわるのか分からないし、その準備としてオブジェまでこさえる意味合いも理解できないが、ヤギと空を一緒に飛ぶこと自体、無茶であっても、あながち無理ではないと思っていた。無理でないなら、お若いのだから気の済むまでやればよろしい、そのためにはなんでも協力しようと思っていた。最大のネックは来春大学院への進学で秋田を離れる予定になったいうことである。私が描いたプランはこうだった。すなわち、来春産まれた子ヤギを生後1週間で初乳と除角が済んだ時点で親ヤギから引き離し、人工哺乳で、Uさんが育てる。人工哺乳用のミルクなどは私の方から定期的に提供する。また、育児に必要な技術を来春まで研修してUさんに習得してもらう。Uさんはこの子ヤギを3ヶ月になるまで育て、その間に交流と空飛ぶことを実現する。子ヤギは3ヶ月の時点で里親さんのところに行く。ミッションの終了、という一筋の道である。そのためにはUさんが子ヤギを預かれる身でなければならず、つまり秋田に居続けることが条件になる。それが崩れてしまったことで、無茶が無理になってしまった。来春までしか秋田にいないのだけれど、それまで空は飛びたいようだ。そうなると成体のヤギしかいない。自然哺乳育ち、体重50kgのヤギたちである。私の牧場に足繁く通ってどうにか馴らしたいとのことだが、それができたら苦労はしない。無理でしょ。馴致とは、ヤギに抵抗のあるものを受け入れされることを最終目的にするとしても、ヤギと人との信頼関係の上に成立する。そのために数年の歳月を私はかける。ときどき来て数ヶ月でできる代物ではないのである。厭がる成体のヤギをダミーの熱気球籠に載せようとしたってリードを引きずられるのがオチで、怪我をしかねない。そうするうち、Uさんがリードを手にした途端にヤギたちはヤバイことが起きるのが分かって避けるようになってしまう。首輪にリードをつなぐことさえできなくなる。もはやそこまで。来春産まれる子ヤギたちは院進学の関係で対象になれない。周年繁殖の種でこの秋に産まれる予定の子がいないか知り合いの牧場に問い合わせてみたが、期待できそうにない。土台、そのヤギと空を飛びたいんだけど協力してくれない?と言ってもまともに相手にされない。八方塞がりで、こういうときはゴリ押ししないことである。
異生物とのコミュニケーションという根本課題は十分イメージできていないようで、ここについても足繁く通うことで打開策が見えることを期待している様子だったが、これも無理でしょ。どれだけ物おじしない子でも、いくら顔馴染みになったとは言え、よそのおばちやんに自分の親と同じ距離感でのしぐさなり、言動はしない、それと同じである。ヤギにだって飼い主にしか見せないしぐさや行動があり、それを察知することでコミュニケーションが生まれる。いくら頻繁に来られたとして表面的にしか、牧場に入り込んで来れない人にはヤギたちも表面的にしか接しない。
空飛ぶヤギは馴致の問題なので「平気ちゃん」がいれば大丈夫。だが、コミュニケーションは双方向の通じ合いが必要になってくるので、馴致とはまったく異なる視点での取り組みが必要になる筈。ヤギとコミュニケーションが取れたかどうかをどのように客観的にとらえるかを研究課題にしたら面白いと思う。個人的にはこちらの課題に興味がある。平気ちゃんと一緒に空を飛んで、なにが残るんだろう、と素朴に思う。見知らぬお宅のチャイムをピンポンと鳴らし、初めて対応する闖入者を、不審者か、信用して良い相手なのか、人はなにをもって見極めるのか、を研究したことがあるそうで、ヤギとのコミュニケーションの発想もその延長にあるそうだ。面白い。物理的に空を飛ぶことよりもはるかに面白い。秋田に居るうちは。ヤギと一緒に空を飛ぼうとしたり、異生物コミュニケーションを自ら図ったりと、自分が主人公になることは、もう諦めた方が良い。馴致したヤギと空を飛ぶことと、ヤギという異生物とコミュニケーションを図ることは、混同し易いが、まったく違う。しかし、どちらにも言えることは自分が主人公になりたいならヤギを飼わないといけない、ということだ。誰かのヤギで主人公にはなるのは難しい。
それではなにもできないのではないか。そんなことはまったくない。ヤギとそれに関わる人を幅広く研究対象にし、自分は第三者の客観的立場に徹するよう見直せば良い。主人公はヤギであり、その飼い主だが、そこに研究者として入り込むのである。
この活動をプロジェクトとするなら、今はプロジェクトメーキングという大事な時期になる。秋田を来春離れることが見えてきたのであれば、このプロジェクトも大胆に見直せば良い。勇気ある路線変更である。
来春まで、秋田に居るうちにできること、来春以降、大学院進学あいなってから、そちらの地に足をつけてやっていくこと。自分がヤギ好きという感情でやりたいこと、研究テーマとして腰を据えてつきあっていけること。それを冷静に整理することが大事だと思う。
道筋のない道は渡れないから。

https://www.bbc.com/japanese/45339078

今日のヤギ時間:トータル5時間

ヤギと空を飛びたいという美術大の学生、Uさんがやってきた。これで3回目の来訪。熱心である。今日は「空を飛ぶ」とはどういうことなのかという話し合いが中心だった。
顛末を語るのは少し時間をいただいて整理してからにさせて欲しい。結論だけ先に言うと、これは無理があるなあ、と言う気がしてならない。気の済むまでやれば良いことだが、秋田に居るうちにやることと、来年の春以降、秋田を離れてからやることを整理してかかった方が良い。
う〜ん。
今日のヤギ時間:トータル7時間

ランチタイムの後、先日去勢手術で使った部屋のモミガラを交換しようと思いたち、新しいモミガラを貰いに行った。ところが「ない!」、からっぽ。そう言えば、昨年の今頃も枯渇したのを思い出した。例の米騒動の煽りで、今年もすべて籾摺りしてしまったのだと言う。モミガラは、籾摺りによって玄米を精製するときに出てくるものだから、もうないわけである。異常気象のせいではあるが、昨年の反省をまったく活かしていない己の学習能力のなさがことさら恨めしい。今年もこうなるとはなあ。次の籾摺りは新米が出てからの11月かなあ、ということだった。2ヶ月以上の空白はまずい。毎年酷くなっていく気候や農業生産人口の減少などを考えると、モミガラがいつでも手に入る時代ではなくなったと覚悟すべきだろう。米どころ秋田で、まさかモミガラ探しに奔走するとは思いもしなかった。厭な時代になったものだが、モミガラ探しの旅に出ねばなるまい。
いや、「旅」などとロマンチックなことを言っている場合ではない。牧場に戻って、術部屋の床を綺麗にする。干し草の屑などもひとつひとつを拾い、今あるモミガラ床をしばらく使っていけるようにした。モミガラの奴、あっという間に貴重品になったものだ。
部屋掃除が終わってから、配合飼料を引き取りに行った。取り寄せている銘柄のものだ。忙しい日だったが、とまれ、これで通常の体制に戻った。ひと安心。
この間、「馴致」に関するコメントをしたが、自然哺乳を礼賛し、人工哺乳を疑問視するようにとらえられる内容になってしまった。誤解のないよう補足したい。
人工哺乳には、ミルク目的としてもメリットが多く、子ヤギの馴致を含めて、これからの近代的な飼養の中核になるべきものと実は思っている。
私の場合は自然哺乳なので、搾乳は子ヤギが里子に出てから本格的に行うが、人工哺乳であれば、親子を分離した時点で搾乳が開始される。自然哺乳よりは場合によって3ヶ月も早くなり、生産性の観点から非常に大きい。人工哺乳は親ヤギから搾ったミルクを与える方法と人工乳を使う方法とがある。後者なら親ヤギから搾ったものはまるまる人のために利用できる。これも生産性の観点から非常に大きい。つまり、人工哺乳は馴致のためではなく、ミルクを確実に長く利用したいという人の知恵から発展したやり方と言える。馴致はその副産物なのである。
この副産物だって魅力だ。やはり、人懐っこいヤギは扱い易い。馴致の訓練も要らなくなる。この牧場に遊びに来る方も、里親さんもさぞかし喜ぶだろう。
所謂発展途上国のヤギたちも人工哺乳で育てられることが多い。生活のために生産性を上げたいからである。また、自然哺乳している飼養者でも人工哺乳の経験は大なり小なりある筈だ。親ヤギのお乳が少なかったり、子ヤギが怪我などでその子だけお乳にありつけないことがあって、その措置として人工哺乳を施すときがあるからだ。
人工哺乳に必要なのは親子を分離して飼養する物理的な環境(人工哺乳を主として行う場合)と人工哺乳のための時間、技術、用具である。
私の牧場を含めて日本で人工哺乳が飼養の中心にならないのは、個人の小規模飼養がほとんどであるからだと思う。人工哺乳に伴う親子分離飼養のための環境は、子ヤギを育てる数ヶ月間、牧場をふたつ持つのに等しく、金銭的、時間的に難しい。お金をかけて楽になるどころか、負荷が増えてしまうことがネックである。
私の場合、既に毎日4時間を超える労働をヤギのために費やしており、人工哺乳や分離した牧場の管理に、更に世話時間がふえることは受容できそうにない。飼養のレベルを落とせば、そういう時間がつくれるのだろうが、人工哺乳のために衛生などのレベルを悪化させるのは本末転倒だろう。
人工哺乳は魅力的だけど、やっぱりできないかなあ。なにか手はないのかなあ。これが本音です。
今日のヤギ時間:トータル5時間30分

今日は穏やかな雨上がりだった。
ついにリンが血乳から脱した。バンザーイ!停止期間は3週間ほどだった。そう喜んだのもつかの間、メッコが両側とも血乳になった。やれやれ。
私たちの基準は相当厳しいと思う。少しでも色合いが変だと出荷しない。このところは左と右の乳房を違うバケツに搾り分けている。つまり、リンの右左、メッコの右左と4つのバケツに搾り分ける。それから厨房の明るい照明の下でそれぞれをチェックし、完全に真っ白なものだけを合格にして、低温殺菌にかける。そうでないものは残念ながら廃棄する。血乳に害はないので、そこまでしなくとも良いのかもしれないが、夫婦の性分なんだろう。そんなわけです。もうしばらくお待ちください。
さて、昨日に続いて駆虫のこと。
この日記はそもそもひとりのヤギ飼いが気ままに綴るアマチュアなものである。だから、決して鵜呑みにしないでいただきたい。という前提のもとで、駆虫信者のみなさんに是非聴いて欲しい。
まず「駆虫」は治療であるということ。予防ではないということである。ウイルスの抗体をつくるワクチンなどとはそもそも違うわけである。私たち人間も子供の頃に駆虫剤を飲んだ記憶があり、あれは予防行為であったと思い込んでいる。だから誤解され易いのだが、そのときに体内にいる寄生虫やその卵などを駆除するだけのことであり、その後入り込んだものに薬効が届くわけではない。
次。寄生虫には線虫や条虫など、いろいろな種類がいて、そのすべてに効く駆虫剤はないということ。つまり、すべての種類の寄生虫を駆除するためには、複数の薬を用いる必要がある。
その次。駆虫して体外に出た寄生虫の一部が生き残って他のヤギに経口して移ってしまう恐れがある。逆効果にならないよう投与の方法に気をつけなければならない。
その次の次。駆虫剤が100%効いて、寄生虫を絶滅できれば良いが、生き残ったものが耐薬性を帯びて、やがて駆虫薬の効かないものたちがはびこる恐れがある。実はこれが一番怖い。
こういうことを知らないで駆虫神話に踊らせられないで欲しい。
虫卵試験というものがある。ヤギのフンを採集し、体内に寄生している虫の卵を計測して、どれだけ、どういう虫に寄生されているかを見極めるやり方である。本来は、こういう試験手順を経て駆虫プログラムをつくり、体系的に根絶すべきものである。素人には無理で獣医など専門家の力が要る。そういう手順や専門的な知見も得ず、ただ駆虫剤を投与して自己満足してはいないだろうか。
体内に居る寄生虫は「見えない」。見えない敵に私たちが対処し得るのは、薬剤ではなく、基本の基本に忠実であることだ。駆虫しているから大丈夫という安心感に頼るのはやめよう。結局、衛生と観察がもっとも大事なのではないか。それを愚直にやっていきましょう。
なお、頚椎に寄生する糸状線虫は感染経路や感染部位などが異なる。私もこの寄生虫に関しては年に数度の駆虫を行う。念のために申し添える。
今日のヤギ時間:トータル5時間

今日は激しい雨が降ったかと思うとパタリとやんで、しばらくするとまた激しく降り出す、そんな妙な天気だった。明日の朝まで続く予報である。線状降水帯と言い、このところの天気の特徴らしい。つきあいにくい奴、どうやら君とは友だちになれないようだ。地域によっては避難勧告や被害も出たそうだ。大禍ないよう祈るばかりである。こうしている内、一雨ごとに涼しくなって、夏が終わっていくのだろう。
リンのお腹はどうやら杞憂だった。昨日の夕方にはいつもの健康体のものをポロポロと落としていた。あの臀部の汚れはなんだったのだろう。でも良かった。
私はフンには敏感である。
いつぞや話したとおり私は駆虫を一切しない。この牧場で、この飼い方をしていれば必要ないと思っているからである。これは家保の防疫担当の方とも相談して決めたことではあるが、経験的なこと、体感的なことを元にしており、なにかの科学的データを根拠にしているわけではない。だから内心は常に怯えている、のが本音で、従ってフンなどの状態に敏感なのである。健やかなフンは、ルーメンアシドーシスがなく、消化が順調に行われているという指標であるが、さらに内部寄生虫に罹患していないことの証でもある。寄生虫に罹ったらどうしよう、笑われ者だな、という心理がある。
そうならいっそのこと駆虫してしまえば良いのにと思われるだろうが、天邪鬼なもので、これでいいんだと考えてしまう。良い環境をつくって、怯えるように敏感に観察することが正しい道である、と。面倒くさい奴ですね、すいません。
今日のヤギ時間:トータル4時間30分

リンのフンが緩んでいるようだ。「ようだ」というのはフンそのものが見当たらず、臀部の汚れでそのように類推できるからだ。ヤギはフンを結構頻繁に出すので、例え水便であっても見つけるのは容易だ。それが一向に見当たらず正常なコロコロのものしかないのが不思議だが。余計に気になる。
配合飼料を変えたせいだろうか。思い当たるのはその程度。私はヤギ用としてみつくろった、少し特別な飼料を取り寄せて使っている。例年、お盆休みの対策として少しまとめてあらかじめ注文しておくのだが、バタバタに紛れて忘れてしまい、切らしてしまった。そこでJAの購買センターに常在しているものをつなぎで使っているが、それが合わないのかも知れない。だとしたら、申し訳ないことをした。他のヤギたちは大丈夫なので、少し様子を見てみよう。
こういうときは思い当たることがある方がむしろ良い。なにもなくて、つまり原因不明なのに異変だけあれば、厄介な病気かも知れないからだ。様子を見る限り、大事ではない感じだが、あとは見守ろう。
敷料はモミガラだけをシンプルに使っていることを先日お話しした。オスの子の去勢手術にあたって個室に隔離する際、獣医さんの指示に従い、そのモミガラの上に干し草を重ねた。術後、子ヤギをそこで数日隔離して、敷料の大切さにあらためて気づかされた。
干し草を敷くとフンなどの汚れが、その隙間からこぼれ落ちるので、掃除のしようがなくなる。こぼれ落ちたフンは人目につかないので床は綺麗である(と見える)。だから、隔離の丸二日、この部屋の掃除はし(でき)なかった。
私の知り合いのヤギ飼いはみな、ほぼこの方式でやっている。稲藁や干し草を敷き詰めるのである。汚れが目立ってきたら、その上にまた新しい稲藁を敷く。床掃除は普段はせず、年に何度か総取り替えする、そういうやり方である。総取り替えのときは大仕事であるが、日々のメンテナンスはほとんどない。汚物は堆積するので牧場臭などの元になる。
モミガラだけだとそうはいかない。落ちたフンや汚物が目立つ。おしっこを吸湿せず、コンクリート床も浸潤させないので、やがて濡れが表面まで浮いてくる。つまり、日々のメンテナンスが求められるやり方だと思う。 
日々のメンテナンスで時間をとられる。しかし、汚物は堆積せず、いつも綺麗なので牧場臭がしない。
隔離が終わって、部屋の干し草を取り除いたら、たくさんのフンが溜まっている。やはり、こまめに拾った方がこの牧場は良いなと、そう思った。
日々の作業が楽で、しかも汚物が堆積しない方法がないのかって?ないんだなあ、これが。
今日のヤギ時間:トータル4時間

調べてみたら、メッコの血乳は右だった。リンの右もまだ完全ではないので、使えるのは半量ということになる。ミルクをお待ちのみなさんには、たいへん申し訳ないが、しばらくお待ちください。赤血球を除去できるフィルターがあるそうだが、目が細かいので通常のGではダメで加圧が必要らしい。農作物の宿命です、ご理解ください。
今日は術部屋を片付けた。片付けたと言っても干し草を取り去り、水場を撤去しただけだが。干し草の屑がモミガラの上にたくさん散らばっている。ひとつひとつ拾うよりはモミガラごと交換した方が早そうだ。が、ここで時間切れ。明日以降、天気と相談しながらやることにしよう。ついで、少しガタついていたこの部屋の扉を修繕した。そういう余裕が出きてきたようだ。
ツクツクホーシが啼いている。夏の終わりを告げる蝉だ。暑い日が続くが、ひところのジリジリした感じでは明らかにない。今年の夏も終わりかあ。
歯医者の定期検診に出かけ、明日のイベントの買い出しをした。夕方、地域おこしグループの月例会。そこで、庭で採れたというミョウガをたくさんいただいた。味噌焼きだな、これは。少しのんびりできた一日だった。
この日記を書くようになって、それまで惰性でやっていたことを言語化することで、あらためて考えることがたくさん出てきた。毎日のルーチン作業の中にもなにかしらの意味合いがあり、こうして整理してみると割と理にかなったことをしている、と自分を再評価してみたり、結構狭い領域で拙く偏った知識に基づいて動いていたもんだ、と反省したりで忙しい。
この日記の特徴は現場に足がついている、ということだと思う。毎日、実際に起きたことや考えてみたことだけを書いている。何年か後に読み返したらどう思うだろう。ヘボだけど頑張ってたな、と思えればバンザイである。
私がヤギを飼う目的は搾乳だと言っているが、本当はどうなんだろう。飼いたいから飼っている、だけなのかも知れない。それが本当に一番近い気がする。
だとすれば、僕がこれからヤギと一緒にしたいことはなんなのだろう。この日記を書き進めていけば見つかる気がする。見つけてみたいな。
今日のヤギ時間:トータル5時間

お盆の週の最後の週末が今日で終わった。一年のうち、もっとも忙しい狂躁の日々をどうにか無事に乗り超えてホッとしている。
お昼過ぎ、藤里のSさんが顔を出してくれた。第二牧場をまかせ、今年からはあらたに子ヤギも飼い始めた。触れ合い牧場をつくりたいらしい。マイクロリーフをレストラン向けに卸し、ゲストハウスや農業も多角的に行なう起業家である。これから、ふらり自転車放浪の旅に出るんだと言う。ゲストハウスに来られる外国人客向けのサイクルコースのルート開拓を兼ねていると言う。30代でまだ若い。空模様が怪しいが、夏の雨は若者には爽快だろう。人生、楽しんで欲しい。彼は人を雇用する経営者だから、こうしてヤギの世話を任せて自分をヤギから解き放すことができる。ヤギや店に束縛される私とは違うが、かくいう私は敢えてそういう道を選んだのであって、それぞれの選択の結果、ということだ。ヤギ飼いが100人居れば、100通りの飼い方・接し方がある。それで良いのである。
メッコが血乳を起こした。ひどくはないが、ミルクが淡いピンク色になる。リンは随分良くなってきたが、まだ100%とは言えない。もったいないが、搾ったミルクはほとんど廃棄することになる。ヤギは血乳を起こしやすいし、今の時期には良くあることだ。だが、2匹ともというのはねえ。血乳になつてもやるべきことはなんら変わらない。世話をしなきゃいけないし、搾らないといけない。搾る人(私)と合否判定する人(妻)が別人で良かった。同じてあれば、せっかく搾ったミルクを無慈悲に捨てることはなかなかできない。やはり夏バテの影響なんだと思う。リンももう2週間になるから長引いている。病気ではないが、早くよくなって欲しい。
昨日に続いて「馴致」について書く。
牧場にやってくる常連さんのひとりにIさんがいる。ヤギが大好きで、かつ詳しいこと、この上ない。県内のどこに、どういうヤギがいるのか、すべて掌握している。全国のこともかなり掴んでいる。私の牧場の扉の開け方を知っているので、ひとりでやってきては、ひとりで入り、真っ直ぐにヤギに向かって駆け寄っていく。ヤギたちは血相を変えて逃げ出す。彼には少し知恵遅れがあり、何回もやってきては、いつも同じことを繰り返している。ヤギたちに触れられもしないのは気の毒だが、ヤギ好きの衝動を抑えないと無理だろう。これと同じのが子どもたちであり、だから、ヤギ(に限らず動物)は子どもが苦手である。
真っ直ぐ近づいてくるものを恐れるのは本能だが、平気なヤギもいる。人工哺乳で育ったヤギである。人を親だと思うので、人との壁がなく、とても人懐っこい。誰にも警戒心を見せないので、こういうヤギは可愛がられる。
私は自然哺乳派である。親子が一緒に暮らせるのは、せいぜい生後3ヶ月間である。せめてその位はおっぱいも親から自由に飲ませたい。親から引き離して人工哺乳すれば、確かに人懐っこいヤギにはなるが、所詮それは人間のエゴなのではないか、と考えている。しかし、そうなると兄弟や親より人の存在は遠くなる。大人のヤギたちは自分の子以外の子ヤギをけむたがって、いじめるので子ヤギに防衛本能が働いて人からも逃げるようになる。しかし、長く、根気よく育てているうち、普段接する飼い主などとは信頼関係が出来る。名前を呼ばれると近寄ってきて甘えるし、搾乳のときは順番に並び、おとなしく搾られるようなる。十分懐くのである。今、Mワイナリーさんに行く4ヶ月目の子たちは、この馴致フェースの真っ最中である。昨日まで逃げていたものが近づいてきて舐めるようになり、触られても逃げずに撫でられるようになる。日に日に懐いてくる変化は面白い。
来年から搾乳していく予定のいちぢく、という名のヤギがいる。今、乳房を触ってもじっとしていられるように訓練している最中である。敏感なところなので、触られることを嫌がって、さかんに足をあげて拒否する。餌やりの都度、保定しては全身を触りまくる。こうして徐々に慣らしていく。根気良く、根気良く、が呪文である。
だとしても、長く連れ添った親ヤギであれ、真っ直ぐ近づくと、それが私でさえ避けようとするだろう。つまりは、いくら馴れても自然哺乳の子には限界がある。ヤギと人は異なる生き物なのだから、そういう限界があることを私はむしろ好ましいと思う。ヤギをイヌのように見立てることには違和感を覚える。みなさんはいかがだろうか。
「馴致」のレベルは、ヤギを飼う目的によっていろいろになる。搾乳が目的の私の場合は自然哺乳のレベルで十二分であり、馴致よりむしろ健康、そして乳量や質が重要である。だが、この牧場に遊びに来られる方はお乳よりは懐きの方が大事なんだろう。Iさんは近寄っても逃げないで欲しいと切に願っているだろう。観光目的には、そういうヤギが望ましいと言える。ヤギは一日にしてならず。出自を良く確かめて飼い始めることをお奨めします。
今日のヤギ時間:トータル5時間

この一週間は厳しい残暑だそうだ。まだまだ暑い。この数年、秋がはっきりせず、失われた季節のようになってしまった。今年はどうだろうか。
去勢オスの経過は順調で、さすかに昨晩は術部が痛い、痛いと泣いていたが、随分柔いだのか今朝から盛んに外に出たがっている。食欲もモリモリ。明日午前までは隔離を続けるが、大丈夫そうでひと安心である。
Mワイナリーさんに下旬にはお渡しできるだろう。子ヤギが去った牧場は祭りの後のような寂寥感があるが、いよいよ本格的に搾乳が始まる。
今、親ヤギは4匹で、うちこの春に出産したのは2匹だから、搾乳はこの2匹からである。たった2匹と思われるだろうが、合わせると日に10リットルも泌乳するスーパースター同士で、10リットル搾るのはそれなりに骨の折れる労働である。
牧場に来られた方に、お乳搾りをやってみたいですか、とうかがうとやりた〜い!、という声が圧倒的にあがる。その声に応えるかたちで何度か体験会を開いたことがある。コツを教えても、いきなりは上手くいかない。額に汗かきながら悪戦苦闘しているうちに、チューっと真っ白な一筋のミルクが搾れる。歓声があがる。感動の瞬間である。
ヤギにとっては、どうやら迷惑らしい。「手が馴染む」というが、飼い主には毎日の作業なので手がスッと乳房に伸びて、それがベストポジションである。手の位置や角度など、実は一匹一匹違う。右と左でも違うし、乳房の張り具合でも違う。これを瞬時でやるのだから我ながら凄いと思う。自分にではない。人間とは凄いもんだと思う。馴染んだ手でやると手際が良いのでヤギも率先して搾らせてくれる。だが、それ以外の手は嫌がる。足をバケツに突っ込んだりしてひと騒動になる。
どうやら、乳搾り体験は、やりたい「人」を優先するか、迷惑な「ヤギ」をおもんばかるかということのようだ。私の信条はヤギファーストなので、結果、滅多なことではやっていない。これを解決するには、乳搾りを迷惑ではないと感じるヤギを育てるしかないんだろうと思う。人との壁を持たない「観光ヤギを」である。
こういうヤギは産まれて早々、親から引き離し人工哺乳で育てる。人を親だと思うのでとても人懐っこくなる。こういうヤギがいれば良いと思う。しかし親と子を分離して育てる環境づくりだとか人工哺乳の手間だとか、相当に負荷がかかつてくる。飼い始めの10数年前ならともかく、もうできないな、と思う。
この牧場は搾乳を目的にして運営している。
ヤギたちは温厚で、人馴れしており、人を攻撃したりすることは絶対にない。
それでも人との間には距離があり、馴れた犬のように扱えるわけではない。
そのことを踏まえて接して欲しい、と、そういうことです。すいません。
今日の仕事を終えた頃の空はもう満天の星空。手を伸ばすと届くようだ。あの星座の名前がわかったら、どんなにいいだろう。いつもそう思い、いつまでもなにもしない。それでも今日も思います。あの星の名前はなんだろう。
今日のヤギ時間:トータル4時間30分

オスの子ヤギの去勢手術を行なった。生後3ヶ月を過ぎているので外科処置が必要になり、獣医さんに来ていただいた。私が行う場合は生後1ヶ月の時点でリング法でやる。輪ゴムで睾丸を縛りつけ、壊死させる方法である。羊の断尾で使うイラストレーターという器具と専用の輪ゴムを使う。このとき睾丸を2個とも括ったことを確認していなかった。そのことに最近になって気づいたのは、ことさらに迂闊だった。
来ていただいたのはかかりつけのS先生ではなくO先生。牛の専門医の方である。外科の処置が必要なときはS先生経由でお願いしている。牛も山羊も反芻動物なので、生理に共通するものが多い。近代的なヤギの飼育法は牛を範とし、牛とヤギとの違いを見定めるやり方をとっているように、私には見える。こういうときに失礼とは思いながら、日頃疑問に感じていることを矢継ぎ早に質問した。牛の場合は、、、という前提条件つきながら、すべて回答いただいた。スッキリ。
私はヤギ小屋にモミガラを敷いているが、手術した傷口からこれが入って化膿などすると厄介である、モミガラの上に大量の干し草を敷き詰める。手術はつつがなく終わり、数日は個室に隔離して経過をみる。
去勢したオスは尿道結石に罹りやすいと言われる。去勢によってオスのホルモンが抑えられる。つまり、オチンチンが大きく育たないので、尿道も細いままになり、石が詰まり易い体質になるということである。生後1ヶ月、というのは尿道の生育を待つという意味合いらしい。結石を防ぐ成分を配合した鉱塩などもあるようだが、濃厚飼料を控え、水を十分に飲ませることが基本である。怖い病気なので、症状が疑われたら、素人判断せず獣医に相談してください。
このオスの去勢に私は失敗してしまったが、生後3ヶ月過ぎまで「玉つき」で成長した。この間、チンチンも順調に育ったろう。結石にはならないで済むかな。そうなら、これはこれで幸いなことだ。
さて、しつこくフン拾いの話をしよう。雨の日はパドックのフン拾いはできない。ヤギ小屋は室内なので雨の影響はなく、一年365日拾い続けている。雨が続くと屋外のフンは溜まり続ける。雨上がりの日は、だから忙しい。熊手を使ってかき集めたりする。掃除後のスッキリ感はなかなかなものである。
夜半の雨も上がって、今日は良い天気だった。レストランもひと段落し、このところの忙しさにかまけて、出来ていなかったことをまとめてやった。ああ、スッキリ!
今日のヤギ時間:トータル9時間30分

今日はオスの子ヤギの去勢手術の予定だったが、獣医さんのご都合で明日に延期された。そこで、昨日の続きを。
私はヤギのフンをこまめに拾っている。日に3時間もかけて、ひとつひとつつまんで集めている。特殊である。こういう飼い方をしている方はまずいないと考えてください。
私の牧場はレストランに併設している。お食事処である。そこに来られるお客さまを牧場臭でお迎えするわけにはいかない。臭いや衛生に人一倍気を遣っている、というのがフンを拾う理由である。その甲斐あって、臭いが一切しない。そういう観点では屈指の牧場だと自負している。
牧場臭は、堆積した糞尿や食い残しの餌などが微生物などの掃除屋によって分解され、一部が腐敗菌に浸かったことによって発生する腐敗臭がもとになっている。勝手なもので、人の都合に良いものを「発酵」といい、そうでないものを「腐敗」と呼んでいる。牧場はその両方が並行する、多様な微生物の宝庫であり、牧場臭はその副産物である。私はその副産物を避けようとして多様性を放棄していると言える。わざわざ時間と手間をかけて、ロストしているわけである。もっとも病原菌もその一員なので罹患のリスクは随分小さい。わざわざ時間と手間をかけるだけのことはある、と言える。
フンは市販の手提げの野菜カゴにとる。周りのモミガラや砂と一緒にすくい取る。網状になっているカゴで、ある程度たまったら、このカゴをフルフルと振るう。網の隙間からモミガラや砂だけが振るい落ちる、という寸法である、こうしてフンだけで一杯になると、更に大きなカゴに移して、これが溜まったら軽トラに積んで堆肥場に運んでいる。一年かけて完熟させる。この光景を見た方はみなさん、呆れる。なんて非効率なことをしているんだ、と。もっと工夫しろ、と必ず言われる。しかし、いろいろ試してもこの原始的なやりやたが一番良いのだ。
私の牧場は砂地なので、こういうことができる。山野の雑草地では無理だろう。ちなみに私は駆虫をしない。腰麻痺の予防は行うが、胃腸に寄宿する内部寄生虫のものは一切しない。発病レベルまでの寄生虫は私の牧場にいないという判断である。なかなか思い切ったことで、ヤギ仲間にはえっ?と驚かれる。これもまたフン拾いの福産だと思っている。
フン拾いの時間は健康チェックと観察の時間でもある。様子の変なフンがあれば誰のものかを特定し、経過をみていく。コミュニケーションの時間でもある。ヤギたちが入れ替わりで挨拶しにくる、まあ、私の様子をうかがいにくる。挨拶を返し、撫でてあげる。生き物は良く入れて、良く出していれば、まず大丈夫。フン拾い、結構貴重な時間なのである。
今日のヤギ時間:トータル4時間30分

忙しい、忙しい、とぼやきながら、日に4-5時間をヤギの世話に費やし、しかも、それが必要最小限などと言っているものだから、これではヤギとはなんと手間のかかる動物なんだろうという無用な誤解を招きかねない。そんなことはないので安心してほしい。端的に言えば、私は時間の使いかたに無駄が多く、これほど時間をかけなくて済む効率的なやり方はたくさんある、ということである、
私が毎日行なっている作業内容や所要の時間のことをお話ししましょう。必ずやることはフン拾い、搾乳と餌やりのふたつである。「観察」は非常に大事だが、このための独立した時間はない。フン拾いや餌やりに並行して行なっている。手はフンを拾うために動かしているが、目や耳、鼻も使った注意力はヤギに使っている。費やす時間のことだが、フン拾いに1時間半を朝夕、餌やりに30分を朝夕をかけている。これで一日4時間、私の場合、今の時期はこれに「搾乳」があるので、加えること15分を朝夕。で、計4時間30分とあいなる。「今日のヤギ時間:トータル4時間30分」というときは、こういう一日のことになる。4時間30分と言えば、相応の時間だが、その割りに内容はチープでたいしたことない。要するに効率が良くない。
次いで、どういうレギュラーな仕事が他にあるかと言えば、
・食いこぼした干し草のかき集め→焼却
1時間 日に1回
・青草狩り 45分 適宜 多いことに越したことはないが、現実的には日に一度
・集めたフンの堆肥場捨て 30分 毎週
・モミガラ交換 部屋ごとなら2時間/部屋、3部屋全部やるときは4時間ほど 毎月
・干し草交換、搬入 4時間 毎月
・水場の清掃 15分 毎週
・削蹄 15分/匹 四半期
という感じ。
私のやり方はひとつの事例に過ぎないし、それにかなり特殊である、特に毎日のフン拾いをこれだけの時間を要して行う人はなかなかいないだろう。餌やりも個別にやつている。まとめてやれば10分で済む。 
確信犯的に効率の悪いやり方をしているとしか自分でも思えない。どれだけ時間をかけて、どういうことをやるかはそれぞれで考えて欲しい。その中で私がなにゆえ、敢えて非効率なことをしているのかを感じて貰えば嬉しい。
理解してほしいことは、ここに掲げた作業のすべてが「物事を前に進めることではなく、マイナスに振れようとする針をゼロに戻す行為である」点である。つまらない、地味なものが大半である。これを雨風吹雪日照り、一年間365日やり続ける、それがヤギ飼いの本質だと思う。
次からはぞれぞれの作業の中身を細切れにしたい。
今日のヤギ時間:トータル4時間30分

メッコ。Mワイナリーさんに行く子ヤギの母親である。変わった響きの名前に聞こえるかもしれないが、この子の母ヤギはマリ。「マリメッコ」から命名した。
一般論を話すと、子ヤギは成長につれ、いろいろなものを口にするようになる。生後2ヶ月で離乳できる。母ヤギと一緒だと2ヶ月以降もおっぱいを飲むが、依存しなくなる。大きくなるに従い、ズンズンと下から突っつくようにして吸いつくので母ヤギも嫌なのだろう。赤ちゃんヤギの頃はじっとして飲ませていたのに、そそくさと避けるようにして立ち去ってしまう。
こうなるとヤギのお乳はいっとき余り、やがておっぱいを出すことをやめてしまう。私はこれを「勝手に乾乳」と呼んでいる。飼い主の意向とは関係なく辞めてしてしまうからである。ミルクを搾りたくてお産したのに、勝手に乾乳されては困る。頃合いを見て、子ヤギが飲み残したミルクを手で搾る。こうするとこの「搾る」と刺激によって泌乳し続ける。
まさしくメッコはそういう状態だった。日に一度余ったミルクを搾っていただいていた。昨晩搾ったとき、随分張ってきていることに気づいた。子ヤギの飲む量がますます減ったのだろう。日に一度の搾乳では追いつかないかも知れない、明日からは朝と夕の2回搾りにしようと思った。読みは当たって朝すでにお乳が張ってパンパンだ。むっ、これはまずい、張りすぎて搾れない。いつもなら5分で搾れるものを、大汗かきながら小1時間もかけて行なった。
私もそうだが、これにはメッコも参ったろう。ご苦労さんでした。完璧に搾り切ったので夕方の搾乳は楽だった。が、今度はなぜか真上にお乳が噴射する。???、一体どうなっているんだろう。
(解説)お乳がパンパンに張るとミルクを搾れなくなります。パンパンに膨らんだ風船が掴みづらいのと同じで、乳房を掴むことができないので、搾れないのです。こういうときでも、そのまま放置すると乳房炎に罹る恐れがあるので、どうしても搾ってあげないといけません。乳首をつまむようにして、少しずつ少しずつ、ミルクを搾っていきます。果てしない時間がかかります。こういう事態を避けるためには、お乳が張り過ぎない間隔で搾るように心がけることです。メッコの場合、日に二度という読みは当たりましたが、今日の早朝に行うべきでした。そこまでは、なかなか読む切れなかったということです。私が、春から秋まで日に2回朝夕と搾る理由は以上のためで、搾乳間隔は人の都合よりもヤギの事情で決まります。寒くなって乳量が落ち出したら日に一度でも大丈夫になります。
乳量が多いヤギはお乳がすぐに張ってしまいます。そういうヤギをお持ちの方はご注意を。
今日のヤギ時間:トータル5時間

ケータリングの「またまた別の団体さん」というのは、ドッグレースの合宿で全国から来られている方々である。この町にドッグレースの本格的なコースを自前でつくった人がいて、その呼びかけで全国大会前の合宿をやることにしたのだそうだ。この春に来られたとき、ヤギミルクをみなさん(の愛犬)に差し入れした。そのご縁で今回のオーダーになった。レース会場に食事をお届けする行き帰りの道路側の風景が気になる。どんな雑草が茂っているのか、美味そうなものはないか、と。これ、ヤギ飼いあるあるでしょう。ケータリングは2日に渡って行ったので昨晩も結構遅くまで頑張った。今日の昼寝は最高のご馳走だった。
ヤギはこのところの忙しさにかまけて、細かいところに手が行き届かない。もちろん必要なことはしている。だからきっと、殆どの方は気がつかないかも知れない。旅館の女将が障子のサンの埃に気をとがめるようなもので、どうも気分がすつきりしない。「衛生」ということで言えば、サンに埃があろうが、なかろうがどちらも大差ないだろう。サンの埃は、だから衛生の問題ではなく、気分、若しくは矜持に関わることだろうな、と思う。
ああー、はやくパドックの汚れを熊手でかき集め、干し草の食い残しも綺麗に拾い集め、モミガラを交換し、削蹄し、身体を濡れタオルで拭いてスッキリしたい。頼む〜!
今日のヤギ時間:トータル5時間

お盆の頃は一年で最も忙しい時期で、今年も目が回っている。今日は団体さまのランチがあり、別の団体さまのディナーがあり、またまた別の団体さまのケータリングのオーダーもいただいた。全部メニューが異なるので、すこぶる楽しいが本当に大変だ。これらの仕込みがなんと明け方までかかってしまい、さしものオイラも枯渇した。こういうことは滅多にないのだが、ヤギに関して必要最小限のことはしなければならない。見るに見かねて、妻が自発的に助っ人を名乗り出てくれた。基本的にヤギの世話は私ひとりが行っているが、体調を崩したり、このように店に忙殺されるときは彼女が助けてくれる。ありがたい。それにミルク。ミルクは搾乳してから、数分の内に殺菌にかける。搾乳は私、殺菌は妻、と役割分担している。こうして、みな、元気で機嫌良く過ごしている。婦唱夫随。
ヤギに自分の夢を重ねる、という話しを昨日した。ヤギバターとクロワッサンのことである。もうひとつ。空飛ぶヤギのお話しを。
先日、秋田市の美術大学の学生が訪ねてきた。用件は「ヤギと空を飛びたい」んだそうである。
???????、意味が分からない。
よく聞いてみると、ひとつには、この、人とは違う生き物と空を翔ぶかのように自在に、コミュニケーションを図りたい、ということ。
ふたつめに、本当に物理的に空を飛んでみたい、そうだ。熱気球に乗り合うことなどを、具体的にはイメージしているらしい。
ヤギ講習のときも必ず申し上げることは、ヤギと人との関係は「自由」だということだ。ヤギを飼う方が自問自答しながら果敢に開拓して欲しい。ただ、誰が飼おうか、どこで飼おうが、どうやって飼おうかが決して変わらないことがある。それを学んで尊重しなければならない。人生をどのように送ろうと、それは本人の自由だが、人間も動物の一員であるからには、栄養や排便、睡眠、運動などを軽んじては生きていけない。人生を軽やかに送るどころではなくなってしまう。それと同じだと思う。ヤギは賢くて柔軟な動物なので、相当のことに適応できる。人の夢を重ねるのにふさわしい動物であり、そのヤギライフはさぞかし素敵なものだろう。そのためにも「ヤギの生理」を知って欲しい。その学生の方、Uさんに協力できることがあれば全部やります。
以下は個人的な見解だが、ふたつめは条件さえ揃えれば比較的簡単。ただ、ひとつめはUさん自身が実際にヤギを飼ってみて、このヤギと一緒にいろいろな経験を積まないと見えてこない気がする。自ら汗をかかないと得られないものがある。もの言わぬ動物と心を通わせることは、結構ハードルが高い。
夢は続く。きっとソロモンの指輪をはめるときが来ると思う。そのときどんな風景が広がっているのだろう。
今日のヤギ時間:トータル4時間30分

新型コロナの波が落ち着いて3年目と考えて良いだろうか。本当は「落ち着いて」などおらず、5類の扱いに移行し、メディアの関心が離れただけである。巷では猛威を奮っているのが現実のようだ。この暑さでエアコンが大活躍し、つまり部屋が密閉されているのが温床になっているらしい。そこに夏休みで人の移動と接触が起こる。気をつけましょう。うがいや手洗いを励行しましょうね。
盛んに騒がれていた頃は家業のレストランに甚大な影響があって、そのためすべて「予約制」にさせてもらった。食材の無駄を出したくなかった。そのような防御的な考えであったか、予約分だけに集中できるので、私たち夫婦のパフォーマンスがあがった。それはつまり、お客さまのご満足につながる。もともとほとんどはご予約いただいていたこともあり、それならばと5類移行後も予約制を継続し、今に至っている。
予約制にして、結構お出しするようになったのがヤギミルクでつくったリコッタチーズである。レモンなどの酸でミルクの脂肪分を固めるが、ミルクの数パーセントほどしかとれない。つくり置きすると臭みが出て来るので、鮮度を求められる調理でもある。いつ、なんにんの方が来られるか分かっていないとなかなかお出しできない季節のメニューと言える。このレストランのリコッタは直前につくる。だから、まったく癖がなくて美味しいのです。
プリンやババロア、アイスクリーム、ミルクジャムにしたり、パンに練り込んだり、ポタージュ、シフォンケーキ、キッシュの食材にしたり、ヤギのミルクはさまざまに利用している。ご近所さんからは「ヤギの店」と呼ばれているようだ。光栄なことです。
ヤギミルクファンの友人の夢は、自分の手で作った小麦を挽いて、ヤギミルクから作ったバターを使ってクロワッサンを焼くことだそうだ。バターは遠心分離させて精製した生クリームをベースにする。ところが、ヤギミルクは脂肪球が小さいので、バターにするのは至難の業である。どうやら自転車にくくりつけて、ロードレースを行おうと企んでいるらしい。どうなることやら。少し涼しくなったらたくさんご提供します。
こうしてヤギたちが誰かの夢につながることはとても嬉しいです。
今日のヤギ時間:トータル5時間

我が家にはテレビがないので今起こっている世情にとんと疎い。功罪比べると功の方が多いと思うが、天気や災害に関しては正確さと鮮度が大事である。ラジオのニュースから流れてくるのは避難命令。日本列島が気圧の狭間にすっぽりはまり込んでしまったようだ。我が家の周辺は大事なく、幸いである。急に大降りになったかと思うと、穏やかな空になる。雷雲が奔っている。ここは穏やかでもあの黒雲の下は酷いことになっているんだろう。
ありがたいことに、この週末もたくさんのご予約をいただいているので、買い出しに出た。東京の甥っ子が夏休みで遊びにきたこともあり、ヤギには余り時間をかけられなかった。
「ヤギ」に対する印象を何人かの方に訊くと「優しくて和む」と言われる。「汚なくて怖い」とその真反対のものもある。それまでどういうヤギに会ったことがあるのか、という経験が大きいのだろう。ヤギ飼いという立場からすると変にバイアスのかかった評価でないことを願っている。ヤギはイヌに次いで家畜になった人間の古い友人である。ヒトの感情を覗き見る名人であるイヌに比べるとそこは淡々としているが「草食動物」ならではの魅力を持った動物だと言う。では、草食動物の魅力ってなんだろう。
大きな声や物音、激しい動き、真っ直ぐ近づいてくるものを本能的に嫌う。従って、ヤギの飼い主はこういう行動を自ずと慎むようになる。一言で言えば、所作が優しくなる。私は草食動物の魅力とは、このことだと思っている。つまり、ヤギそのものにあるわけではなく、それに接する者にもたらす変化こそが、ヤギの魅力ではないか、ということである。ヒトを「良い人」にさせる力である。 
「人の感情に淡々としている」と前述したが、それは人の感情を読み取れない、こととは違う。それどころかかなり敏感に察知している。未熟者の私は夫婦喧嘩などすると露骨に態度に現してしまう。これがヤギには分かる。彼女たちは私の喜怒哀楽を理解し、ときにそれを遠巻きにして観る。かなり賢いな、と思う。機嫌良くしているとくっついて来る。だから、多少腐ることがあってもヤギの前では穏やかで上機嫌を装う。上機嫌を演じていると、もともとが単細胞だから本当に機嫌が良くなって来る。
ズバリ、これがヤギの魅力、です。
今日のヤギ時間:トータル4時間

夜半の雨がヤギ小屋の中に吹き込んで一部の床が濡れてしまった。昨晩は雨と知りながら、窓を開けっぱなしにした。蒸して暑かったので通気したかったのだ。雨がやんだら、床のモミガラを交換しよう。
裏山の砂がパドックまで結構流されている。ヤギ小屋の土手側が足首の高さほど砂に埋まってしまった。ちょっと考えないと。
まあ、こうなったとしても降らないよりは降ってくれた方が良い。程よく頼む。
ディナーがある日は、積み残した仕事を、お客さまがはけてから始末することがある。例えば、昨夕はMワイナリーさんでの研修を終えて戻り、搾乳と餌やりを終えて、それから厨房に入った。ディナーを終え、夜9時くらいから残りのヤギ小屋の床掃除を行った。と言うと悲哀臭が漂うかも知れないが、ヤギ小屋の灯の下で行う作業は結構快適で気に入っている。
夏の夜の厄介者はなんといっても「蚊」である。先に述べたように、ここは海寄りの砂地でブッシュに囲まれているわけではないので、蚊はそんなに多くないと思う。それでも、蝿や虻でも、蚊でも、羽があって、飛んでくるやつは始末が悪い。この時期は、ヤギ小屋にキンチョールとどこでもベープとKAKOIを常備している。キンチョールを噴霧し、蚊の総員退避を見届けて作業に臨むが、効いている時間は短い。ガスを出して蚊を誘引し吸い込んでしまう機械もあるようだが恐ろしく高価で手が出ない。なにか目から鱗の画期的な策でもないものだろうか。
夜の時間はネズミどもがうるさい。チュッチュ、チュッチュと鳴き合いながら運動会よろしく我が物顔で走り回っている。狩名人の外猫がいたときはほとんど見かけなかった。動物たちのパワーバランスだ。
近所の児童ケアの子どもたちと職員の方がランチにやってきた。その頃はちょうど雨も止んでいた。これまでちょいちょいヤギ見学にみなさんで来られている。私の牧場のヤギは穏やかだし、綺麗に飼っているので癒されるようだ。
子どもとヤギと、この風景は実に良い。この町にやってきて、やりたかったことがここに現実にある、と思う。日照り続きで草っ原が焼けたせいで、緑ではなく茶色のショウリョウバッタが出るようになった。難しい言葉で正確に言えば「相変異」である。そうとは知らず、珍しいバッタを発見した、と騒いでいる。おいおい、ヤギじゃなくて、バッタかよ!
今日のヤギ時間:トータル4時間

今日は今年の子ヤギ里親さんのひとりである「Mワイナリー」でヤギ講習会を行った。
私の牧場の歴代の子ヤギたちは殆ど県外に居る。好んで県外に出すわけではないだが、何故かなかなか引き合いがなかった。だから、こうして近場に里子が出て行くのは嬉しい。ときどき様子を見に行きます。
Mワイナリーさんでの受講は6名。チームを組んで分担しながら飼うのだそうだ。複数の方が対象なので今回は私が出向いて座学のみ行った。本当は牧場までお越しいただいて、実際、ヤギを観て触れることが一番良い。実習できれは、百聞は一見にしかずになる。
先日、青森の八戸からわざわざ来られた方がいた。ヤギを飼うのが夢なんだそうだ。現実にはいろいろ課題があって難しいようだ。研修だけでも受けてみたらどうか、とお誘いしたら喜んでいた。「飼う」ことを前提にはしない研修があっても良いだろう。
講習は、草食動物の食性に関わることが中心になる。これだけ理解してもらえれば80%大丈夫だ。Mワイナリーさんには、むろん葡萄園がある。微生物の話しをしながら、ヤギとワイナリー、葡萄園とは相性が良さそうだな、と合点した。今回は「馴致」の項目を加えた。Mワイナリーさんには、外からのお客さまがたくさん来られる。ヤギが人に懐くことかことさら大事なことだろうと思う。自然哺乳で育った子でも、愛情を持って根気良く育てていけば十分人懐っこいヤギになる。どうか、人に無用な警戒心を持たないヤギたちになって欲しい。
やったことのないことは、やってみないと分からない。なんでもいい。ささいなこと、分からないこと、気づいたことがらあったら、遠慮せずに連絡ください。くれぐれもお願いしてきました。
子ヤギはもともとは明日引き取りの予定だったが、オスの子の去勢を失敗してしまっていたことに最近になって気づいた。この時期だと私の手には負えず、獣医により外科手術をしなければならない。術日は14日となったが、術後1週間から10日は経過をみる必要がある。つまり、明日の引き渡しはしばらく延期。
ヤギに限らないだろうが、生き物と一緒にいるとこうして、次から次に問題が起こる。経験を積むとトラブルは減るが、ゼロになるわけではない。予定どおりいかないと、それを正常軌道に乗せるために大変なパワーが要る。それを面白いと思えることがヤギ飼いの資質なのかも知れない。ホント、つくづくそう思う。
今日のヤギ時間:トータル8時間

リンはやはり血乳だった。
お乳はそもそもは血液なので、その赤血球がお乳に混ざって出てきてしまうと真っ白なミルクがほんのりピンクに染まる。産後や今の時期になり易いが、病気ではない。多少舌触りに影響があるので商売物にはならないが、害はない。ビタミンKを投与(注射)すると治ると言うが、1週間ほどでとまるのが常である。最初の頃は黒ずんでいたので、これはなんだろうかと思ったが、次第にピンクがかってきた。こういう出方もあるんだとあらためて勉強になった。夏バテなんだろうと思う。ヤギの乳房はふたつある。そのどちらかは正常であることが多い。リンの血乳は「右」でした。大分良くなっている。もうそろそろ復帰でしょう。
今日は予定されていたイベントが雨で中止。27組の親子連れが来られる予定だったので至極残念だが、久々の雨は正直恵みだ。
雨の日は屋外の仕事に制約が出て、やりたくともできないことが多い。裏返せば、結構のんびりできる。最近、本とはとんとご無沙汰だが、気分は晴耕雨読だ。
採草地にしている裏山がこの日照り続きで赤茶色く焼けてしまった。砂山なので山肌から地砂が現れ、こうなると雨もろとも砂が流れ落ちてしまう。
一昨年の夏もそうだった。毎日暑くて、これではたまらんとなり、早々に乾乳した。そうしたら、是非ヤギミルクを売って欲しいとオファーがきた。レストラン向けに一匹だけは搾乳を続けていたので、その年は彼女のお陰で乗り切った。昨年から正式に取引を行って今まで来ている。
一昨年は牧草の種を買い、裏山に蒔いて、緑を復活させた。僕はそもそもはお金のかからない丁寧な暮らしがしたくて、田舎に移り住んで、ヤギを飼い始めた。それなのに、という思いがよぎるが、この様子だと今年もしなきゃいけませんね。蒔き時が意外に短く、9月が適期。忘れないようにしないと。
私の牧場は砂地なので、衛生を保つと言う観点では優れている。なにせ砂の裸地に日光が直接降り注ぐ、しかも潮風だ。雑菌がはびこる隙間がない。しかし、採草となるととたんにダメ土地になる。良いところとダメなところが極端にある土地だと思う
土地もヒトも一緒だ。すべてに優れているものもヒトもいない。良いところを見つけ、そうでないところは工夫していく。そうすることで、総じてその土地やヒトは良くなる、まあ、そんなもんです。せっかく縁あった土地をダメにせず、良い土地にしていきましょう。
今日のヤギ時間:トータル4時間30分

外はとんでもない不快指数、夜半から雨らしい。
私は店舗兼住宅の建物に住んでいるが、密閉性の高い住宅で、しかも昨年エアコンなどを一新したので、かなり快適に過ごしている。ただ、思うのだが、夏はときには汗腺を全開して汗が吹き出ることに任せた方が気持ち良い。
それでも風もなく、湿度はこれからも上がっていくようだ。ヤギたちにはさぞかし寝苦しい一晩になるだろう。気の毒である。
夕方、牧場に行って驚いた。3ヶ月になるオスの子ヤギの顔面が血みどろになっている、除角し切れずに残った角芽から伸びた変形角がなんらかの原因で根元から折れたのだ。ヤギの角には血管が通っており、折れたときにその血管も破れて血が吹き出した、ということだった。
私は人とヤギが仲良く暮らすために除角やオスの去勢は必要だと思っている。どちらも本来ヤギが持つ機能を損ねることなのだから、苦痛を伴わせることになる。それを以て、除角などに反対する方もいる。ここでは詳しく触れないが、私はそれは違うと考えている。ただ無用の苦痛を避けるため、獣医さんに頼んで全身麻酔を施して行なっている。
除角には適期があり、生後1週間くらいに行う。真っ赤に焼けたコテを頭部に押し当てて角芽を焼き切るのである。これでもう伸びてこない、と思いたいところだが、実は一発で止まることばかりではない。特にオスは角芽の勢いが強いので半分以上の確率でまた角が伸びてくる。これを完全に止めるためには、再除角が必要となり、それは1ヶ月以内に見極めて実施しないといけない。
除角しても伸びてしまう角は変形した弱い角である。だいたいはなにかの拍子に折れ、また少し伸びてなにかの拍子に折れ、を繰り返し消えていく。だから、今回子ヤギの角が折れてしまったのは想定内の出来事である。血が流れるのもそう。
ただ、いつもよりも多い流血で、ちょっと可哀想なことをしたと心が痛む。再除角は二度の全身麻酔という体の負担につながるため、私はやらないのだ。う〜ん、オスの場合だけでも再麻酔・再除角を来年は考えた方が良いのかな。
今日のヤギ時間:トータル4時間30分

これだけ雨のない日が続いても、木々の葉は元気に青々している。凄い生命力だ。
ヤギはニセアカシヤが好きなので、近くの空き地で切り倒してきたものを、枝ごとパドックの中に放り入れる。ものの30分ほどで食べ尽くし、やがて木の皮まで器用にはいで食べてしまう。乾草を欠かさず食べられるようにしているが、好きなのは圧倒的に青草である。むさぼる様を見るのは気持ちが良い。アカシヤの他に桑や栗、桜なども大好きだ。アカシヤの木はトゲだらけなので私が結構傷だらけになる。それでも青草の季節は一年の半分ほどしかない。まあ、せいぜい青草漁りを勤しむことにしよう。
ヤギを世話した後、そのまま着替えて厨房に入ることはしない。衛生の観点である。
裏の風除室で作業着を脱ぎ、そのまま風呂場に直行して体の汚れを洗い流してから、ということにしている。11時半にお客さまを迎え入れるなら10時半には厨房に入らないといけない。そのためには10時にはヤギの仕事を終えて戻らないと間に合わないということになる。結構、慌ただしい。
前夜の仕込みが夜更けまでかかるときがある。翌朝、寝坊をするとヤギの仕事が終わらず、途中で切り上げて戻らないと行けなくなる。ディナーがあると更に忙しい。夕方5時には戻らないといけない。ランチが終わって休憩なしでヤギの世話をしたり、あるいはディナーが終わった後の夜9時くらいから灯の下でやることもある。
不思議なのだが、それが、料理もヤギも、ちっとも苦ではない。むしろ楽しんでいる。
「好き」だということに才能があるか、ないかはさして重要でないのかも知れない。努力を惜しまないことができるから。
今日のヤギ時間:トータル5時間

S獣医が電話をくれた。
仔牛の夏バテにはどうやら「リポビタンD」がいいらしい。これ、へえー、ですよね。リポビタンDのビタミン群が効いて仔牛はシャキッとなるらしい。体重50kgあたり、100ccほど。仔牛はまだ単胃状態なので、第四胃に真っ直ぐ届くが、ヤギの成体では1〜3の胃を経由するため効き目は違ってくると思うが、という注釈つき。その他、ダイナミックスという補強剤もあるが、ヤギには成分などを調べて慎重にやった方が良いとのこと。さっそくやってみました、もちろんリポビタンD。ありがたや、それにしてもリポビタンDとはねえ。
今年ももう8月になった。
いつもなら、お盆を過ぎると急に暑熱が和らいで秋を感じるようになる。「毎日、暑いね」と口癖のように言っていた時候の挨拶が懐かしくなってくる。ところが、この数年は夏がダラダラと続いて、いきなり冬がやってくるという感じがする。秋という季節がなくなってしまった。
ヤギにとって秋は発情の季節だから、それがなくなるのは大問題である。日照時間が短くなると脳の松果垂体が感知しホルモンに影響するらしい。この数年はその日照時間が長いままなので発情が来ない。厳密に言うと極めて不明瞭になってしまった。夏バテの影響もある気がする。ヤギ同士なら分かるんだろうと思うが、私のように人工授精で繁殖を施す者にとっては難問をつきつけられる気分だ、
暑い暑い毎日が続いている。この夏は、果たしてどんな終わり方をするんだろう。
今日のヤギ時間:トータル6時間

今日も暑い。台風の影響もあってか、来週はようやく下り坂らしい。雨は恋しいが、洪水は困る。激烈な天候の大変な時代になってしまったものだ。
獣医とY種苗に夏バテのことを相談する。ちょっと調べてみてくれるそうだ。どんな回答か楽しみに待とう。ヤギに詳しい獣医は珍しい。私の主治医のS先生も専門は「豚」。ヤギに詳しいに越したことはないが、大事なことは仕事に真摯に向き合うことだと教えられる。少し時間がかかっても良いものがあるし、急ぐときには他の先生を紹介してくれる。信頼できる先生である。
散水する。鳩や蝶や蜂がその水を求めてやってくる。みな、水が欲しいのだな。
今日は週末分の仕入れや仕込みの日だ。こういうときは、ヤギのことにあまり手がかけれず、ルーチンワークが中心になる。
それでも、餌として放り投げている木の葉を食べた後の枝が随分積み上がったので処分しに行く。捨て場まで軽トラで3往復。細かい枝まで拾っている時間はないので、またにしよう。雑草の刈り払いもそろそろしたいが、そういう時間は今日はなさそうだ。
それでも配合飼料が最寄りのJA支店に届いたので引き取りに行く。買い出しデーなのにヤギに時間をかけ過ぎだ。皺寄せが来そうだ。
私は餌やりを1匹ずつ個別に行う。1匹ずつ、個室に誘ってそのヤギそのヤギごとの適量を与える。個室だから他とは隔離してゆったりと食べることができる。つい、この間まで親と子は一緒だったが、かしましくなつてきたので、別々にあげるようにした。最初の頃はルールの変更が分からず面食らっていたが、すっかり慣れて自分の順番を待てるようになった。あれから1週間で慣れた。お前ら、賢いなと褒めてあげた。
DIYショップで水道のホースも新調する。水撒きが少しは楽になることを期待するが、どうだろう。
蚊取り線香など虫除けの器材をヤギ小屋に取り付ける。数日前から大分出てきた。多少の効果はあるようだ。蠅取りのトラップは明日以降かな。なかなか一気にはできない。
どうしても店のことが最優先になる。お金をいただく以上、当然のことだが、この時期はヤギや庭の仕事もたくさんあるのでたいへんだ。ヤギなど外の仕事も、店の仕事も春から夏がピークになる。冬はどちらもゆったり。こういう季節労働、悪くないが。
今日のヤギ時間:トータル6時間

連日の日照りが続く。リンのミルクが黒ずんで変色。血乳なのかな?ちょっと違う気もする。食欲が落ちているので、夏バテの影響と思う。ミルクは廃棄してしばらく様子をみることにする。1週間ほどはダメかな。
パドックに水を撒く。30分ほど撒いて、搾乳◦餌やりしたら、もう乾いている。ので、もう30分ほど水を撒く。長続きする効果ではないが、しないよりは。
午後、Mワイナリーのヤギ受け入れ環境をチェックしに行く。7/27の引き取り予定が遅れたが、頑張ってここまで整理してきた。8/6に講習。受講生は5名ほどだそうだ。8/7子ヤギ引き取りの予定。
帰り道に井川に寄って干し草をドンと積む。
良い干し草をいつでもつまめるようにしておきたい。
ついで、夏バテ防止のサプリをサンプルでもらう。白い粉状。牛には6月から9月くらいまで餌に混ぜて食べさせるそうだ。ルーメンのPH調整剤といったところだろう。試してみよう。
この夏の暑さは酷い。雨が降らないので、草が焼け、山が茶色くなってしまった。ヤギたちには酷だが、しばらくは工夫しながらも我慢してもらうしかない。井川の牛たちも辛そうだった。
鉱塩を新品に交換。
ヤギもたいへんだが、ヒトも汗まみれでたいへん。頑張ろう!
今日のヤギ時間:トータル7時間

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