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農園リストランテ

25.09.24 血統6

今日は隣県の岩手・江刺からはるばる人工授精を勉強にこられたご夫婦がいた。非礼な言い方になるが、在のご年配者の方だった。しかし、こういう御仁はなかなかいない。尊意を感じる不思議な出会いだった。今は羊を10匹とメス山羊を1匹飼っているが、ご近所にも何頭かいるので、人工授精での繁殖を試みて優秀な個体を後代に残したいとのことであった。最近まで豚や牛がいて、人工授精の様子は間近に見ていたらしい。そういうご経験があるので話がスイスイ通って気持ち良い。こうして志を持つことは素晴らしいと思う。歓待し、3時間ほども座学と実習を行った。繁殖の生理まで理解しようとなるとさらに何日かかかるだろうが、下地のある方に人工授精のメソドだけなら十分な時間だと思う。
牧場を案内したところ、ヤギたちの体躯を見て感動していた。これだけではるばるやってきた甲斐があった、と嬉しいコメントをいただいた。ひとしきり話しの中で、血統のことにも触れたが、この方、鳩も飼っているようで、鳩の世界ではインブリードが好んで行われるとのことだった。兄弟同士はさすがに避けるが、隔世間のものは結構行われるらしい。
さて近交係数について語ろう。

なぜ近親交配が禁じられるのか? – 近交係数の計算


近交係数とは、近親交配係数のことで、そのオスとメスの組み合わせの近親交配の度合いを表す。私が学んできたものでは、1/20以下に抑えてアウトブリードしなさい、というものである。祖先を永代に遡らないと0にはならない。どんどん遡っていくとどこかで共通する祖先が居るものらしい。だから、0でなければいけないというものでも、また現実的に0にできるものでもないようだ。ヤギの場合は血統書に父方の祖父母と母方の祖父母まで記録されている。オスの血統書とメスの血統書を突合して、ここに共通する名号がなければ1/20以下である。私はそうやって種の選定を行なっている。
近交係数は気にしないと言われる方、つまり近親交配を厭わないという方は案外多くいらっしゃるが、私は大事だと思う。産まれてくる子ヤギの丈夫さが違う気がするからである。SNSなどを含めて、全国にヤギ飼い仲間がいるが、いろいろ入ってくる情報を広げるとどうもヤギそのものが弱いのではないかと思えてくるものが少なからずある。なぜ、そんなに簡単に、頻繁に病気になったり、命を落としたりしてしまうのか、分からない。飼い方が悪い?それもあるかも知れないが、そもそも生命力の弱いものが増えている気がする。飼養頭数の減少は、地方のヤギ集団の孤立化を招き、その小さな集団の中での繁殖を繰り返して、近親交配を進めた。もっとも顕著な徴しが体躯の矮小化である。私の牧場に来られる方は異口同音にヤギたちの体躯に驚かれる。ヤギとは本来こういうサイズです。なるほど他の牧場にうかがうと貧相(失礼!)に感じる。骨組みが弱く、乳量も期待できず、病気がちなんたろうなと想う。
こんな生意気な口は本当にききたくないが、また、遺伝学に詳しいわけでもないが「血統」は大事です。良い血統のヤギを良く育ててください、と叫びたいのである。
今日はヤギ時間:トータル6時間30分

追記 先日、血統3にて、サラブレッドのインブリードのことを書いた。例として4×5の表示をあげたが、これは父方の曽祖父と母方の曹曽祖父、若しくは父方の曽祖母と母方の曽曽祖母に同じ個体がいるという意味である。つまりはサラブレッドの血統管理の緻密さを表すものだと思う。きちんとした家系図でも残っていない限り、私たち人間界でも遡れるのは、せいぜい2代前までであり、それより古いことは噂で聞くレベルになる。それを4代・5代と遡られるのは凄いと言わざるを得ない。この4×5はサラブレッドの血統上はインブリードとして遺されるのであるが、近交係数を計算すると1/20以下であり、立派にアウトブリードである。こうなるとインブリードとアウトブリードを対比的に論ずること自体不毛であることが分かる。
シバヤギは日本在来のヤギだが、長崎の一部で肉用として飼育されてきた過程で、近親に極強い種になり、近交劣化がおきないという説がある。近親交配の長い歴史の中で悪い遺伝子をもった個体はすべて淘汰され、残っているものは耐性もあるものだけだということである。もっともそれはシバの純種に言えることであり、今日、シバと言っても交雑種しかいないだろうから真偽は分からない。
類や目、あるいは種、品種により差も大きいかも知れない。植物や昆虫にはそれが日常的なものもあるようだ。だから、鳩とヤギを同列で扱って良いかどうから分からない。これ以上は遺伝学の専門知識が必要ですね。
ただヤギの場合、一部の愛好家は血統管理しており、それは血統の価値化が目的ではなく、子々孫々に健康なヤギを残すためであり、そのためにアウトブリードに配慮しているという事実がある。極めて健全な考えであると思えるのである。

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