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農園リストランテ

25.09.19 ヤギバターの実験

残暑が厳しいが、日が落ちるとうら寒くなるような季節になった。日中の作業ではさすがに額に汗が浮かぶが、今日の夜はヤギ小屋の窓を閉め切ることにした。風が冷た過ぎて、風邪をひかせてはいけない。
残暑、残暑と言いながら秋田は良い季節です。
ヤギたちの発情は相変わらず分からない。もう9月も終盤に入るので、そろそろ頼むよ、という気分である。リンがいつもより鳴くことが多かった。ちょっとした変化だがメモしておこう。
ヤギバターのMさん、2回目の実験も失敗だったようだ。殺菌方法を変えても、クリームとホエーに分離しないと言う。なぜなんだろう。先日も述べたとおり、やることはシンプル、レシピもシンプル。間違えようがないものが上手くいかないと、こういうシンプルなものが一番厄介だ。ノンホモとはなにか、ひとつひとつを振り返ってみる。消去法として残るのはヤギそのもの。ヤギの育て方のためにこうやって分離しないミルクになるのではないだろうか。そもそも分離とはなにか。分離することが本当に良いことなのか、ひとつひとつを考える。
言い訳に聞こえそうだが、私には簡単に「分離」するヤギミルクは雑なものという感覚がどうしてもある。ビロードのようにきめ細かくて滑らかなものが良いミルクだと思っている。だから半分はいぶかしんでいるが、半分得心である。例えば、味噌やマヨネーズを思い浮かべて欲しい。痛み始めると水と固形物に自然分離する。分離とは劣化過程にあり、簡単に分離するものは怪しいと思うのである。ノンホモの牛乳(なかなか市販されていないが)でも分離が起こってくるのは賞味期限が切れそうなギリギリである。
私は牧場のヤギミルクをペットフード会社に卸しているが、その場合ほとんどは冷凍してお出しする。消費期限のためである。このとき「いかに分離させないか」に注力する。ミルクが分離すると風味が損なわれ舌触りも悪くなるからである。冷凍ミルクの分離は、タンパク質や脂肪と乳清の凝固点(凍りつく温度)が違いが原因である。大量のミルクをゆっくり凍らせると分離する。今回は「分離させたい」のだから、この方法を逆手にとればできる筈である。つまりはわざと「雑」にするわけだ。ただ、この無理矢理雑を演じた自然分離で果たして美味しいものができるかどうかはやってみないと分からない。冷解凍に伴う分子の遊離だから鮮度を落とした劣化ではないところは安心できる。いずれ次は冷凍解凍だ。
来週の初めに5リットルのQBテナーで「ゆっくり」冷凍したヤギミルクを渡し、これを冷蔵庫で数日かけて、「ゆっくり」解凍する。分離を冗長する「ゆっくり」だ。さらに縦長のガラス瓶に入れ替えて、一日以上静置する。これが次のプランである。
私はMさんのバターというより、その過程で精製される生クリームに興味がある。料理のレパートリーが格段に広がり、ヤギが活躍する場にもなる。
冷凍方式でもダメなら自然分離は諦めだな。遠心分離などで食品の成分の性質を利用しての強制分離に挑戦することになるだろう。本来こちらの方が食品加工としては王道で望ましいと思う。問題は実現方法。ヤギミルクに合った遠心分離機など、高価でとても手が出ない。いよいよ自転車にくくりつけてロードレースなのかも知れない。
今日のヤギ時間:トータル3時間

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