今日はヤギバターのMさんに実験用のミルクを渡す日だった。1.3リットルを2本。今回は殺菌せず、そのまま渡す。殺菌はMさん自らやるという。75℃30秒と40℃12時間のふたつのパターンを考えているようだ。無殺菌なので、搾乳してから間髪置かずに渡したい。食品の雑菌は10-60℃の温度帯で増える。30-40℃では特に顕著となる。だから、間髪は置かないが、きちんと冷却してからお渡しする。さて、どうなるか。一週間以内には第二弾の実験結果が出るだろう。楽しみだなあ。
随分日が短くなった。秋田市にひとりで暮らす93になる母を訪ね、町に戻ると6時を過ぎたばかりなのにもう薄暗い。これからどんどん日が短くなる。それでも暑熱が和らいで仕事はし易くなった。束の間の過ごしやすい季節がやってきた。
さて、昨日に続いて血統の話しをしよう。
近縁同士から産まれた子どもは遺伝子の配列が似ているため、劣勢の遺伝が重なってしまい、産まれつき脆弱な体質になってしまう恐れがあることは一般的に知られている。近親交配のリスクである。SNSのヤギ仲間の投稿などをみて感じるのは、この近親交配が随分進んでしまっていて、産まれつき弱いヤギがたくさんいるのではないかいうことである。こういうヤギはもともと弱いのだから、どのように大事に育てても限界がある。病気になったり、最悪のケースを迎えたりする。そうとしか思えない投稿もかなり目にする。
私は血統の離れたヤギ同士での繁殖を心がけている。そのお陰で私の牧場のヤギは丈夫な健康体ばかりである。骨格がしっかりしていて体も大きい。氏より育ちと言い、誠にそのとおりなのだが、氏も大事だ。私が人工授精て繁殖を行う大きな理由のひとつが近親の回避である。ある地域のことを想像してみよう。その地域ではオスヤギを飼っている方がひとりいて、そのあたりのメスヤギはみな、この方の世話になっている。初めはいい。そのメスから産まれたメスの婿さんはどうするのか。近親を避けるため、隣の地域のオスに連れて行く。ではまたそのメスから産まれたメスの婿さんはどうするのか。隣の隣の地域に行くのか。ではまたまた、、、、、やがて近親交配が起こり、その地域のヤギの遺伝子は特定のものに偏っていく。そして、矮小化や奇形化、脆弱化が顕著になる。これが実態なのではなかろうか。
子ヤギを探している方は血統を良く見てから迎え入れて欲しいと思う。ヤギの血統証明は純血であることを証明し、高価値で取り引きされるために存在するわけではない。将来の乳量を保証するためのものでもない。インブリードを防ぎ、健全なヤギたちを後代に残していくためのものだと私は思う。
リンやメッコの乳量が凄いので、資質のあるヤギを選抜して、自牧場に残しているんだろうと思われるかもしれないが、そんなことはない。私には子ヤギの鑑定眼は残念ながらない。なにかの縁で残しているだけである。血統をよく見て、丈夫な子ヤギを大事に育てることを基本にしている。丈夫でさえあれば、スーパーヤギである必要はないと思っている。現にメッコは数年前は並みの乳量だった。去年あたりから化け出した。気の短い飼い主だったら淘汰していたかも知れない。今はスーパー母ちゃんになつてくれたが、言わば「メッコの恩返し」なのである。
一方、インブリードに進む世界もある。イヌやサラブレッド、黒毛和牛などてある。そこには人間の欲望が渦巻いている。続く。
今日のヤギ時間:トータル3時間30分
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