狭い我が家に布団がところ狭しと並んでいる。合宿のよう。雑魚寝というやつである。ここに移り住んで家を建てたとき客間という概念がなかった。いやなに、リビングと言うかダイニングなら広い。店舗兼住宅なので、店の環境を使えば良いから、レストラン仕様である。ただ、宿泊場所については、一年にどれだけ泊まりにくるか分からないのに、余裕を持った部屋数を持たなければならないことに合点いかなかった。金もなかった。その結果がこの雑魚寝である。客人が来ると、あれば良かったかなあと思う。帰るとやっぱり要らないなあと思う。結局、建て増しはしないで終わるんだろうなと思う。田舎には土地がある。だから、そこに大きな家を建てて、たくさんの部屋をつくり、客人はそこに泊めてもてなす。そういう文化が成り、だから旅館業が育たなかった。ときは流れて、お盆などの帰省で戻ってきても実家ではなく、ゲストハウスなどを利用する方が増えているらしい。田舎の古い家に泊まりたくない、ということがあり、また、帰省につきあう方がつれあいの実家で気を減らしたくないということもあるようだ。民泊やゲストハウスが賑わっている。こうして、その時代、その土地で生きていくんだろうな。
孫たちが遊びに来たときも、どこか楽しいところや観光処に連れていこうなどと考えない。水族館やなまはげの伝承館などに行ったことはあるが、一度で十分らしい。この庭や牧場に放し飼いすることが一番喜ばれる。今日は珍しくも「海」に行きたいと言った。まあ、ここの庭や牧場の延長のようなところだと思う。こんなんでテーマパークのようなものをつくってもなかなか続かないだろう。
孫たちは田舎の魅力とそこでの過ごし方を良く知っている。のんびりするのが、来る人にも迎える人にも一番なのである。広い庭で水遊びし、花火をし、ヤギに草をあげて、海に行き、ついでネコとも遊んで、ご近所さんのお誘いを受けて芋掘りをし、美味いものを食べ、布団部屋で秘密基地をつくって、きっと最高の夏休みだろう。
秋田の夏の夜の風は葉っぱの上をすぎて吹いてくる。だから、都会のそれとはまったく違う。そんな涼しすぎるほどの昨晩の夜風だった。
メッコのことをちゃんと書かないといけませんね。いつぞやも触れたが、母親はマリ。メッコという名は「マリメッコ」からいただいた。この子の祖母はリンのときに紹介した凄いヤギと同一個体で、メイと言う名前だった。つまり、リンもメッコもこのメイの孫なのである。リンはメイの息子の子どもであり、メッコはメイの娘(マリ)の子どもである。どおりでふたりともスーパー母ちゃんになったわけである。だがこのふたり、顔も体型も性格も乳房のかたちまでもまったく違うのである。ミルクの質まで違う。
リンはメイと顔貌や性格がよく似ている。対してメッコはお爺さんの血筋なんだろうなと勝手に想像している。勝手な想像の根拠ならある。乳房である。私の牧場のザーネン種は全員ルーツが長野である、そして、長野のヤギには乳房にスポットという斑が出る特徴がある。しかし、メッコにはそれがない。染みひとつない綺麗な乳房をしている。メッコのお爺さんはエクスカリバーフロドという大層な名前のNZからやってきた牡である。この系統にはスポットがないのではないだろうか。と勝手に想像している。罪のない、たわいもない想像である。
メッコは私以外の人と距離をとる、少し臆病な子だった。この2-3年で急に懐き始めた。よその人にもフレンドリーに接している。いい子なんだ。娘がリードにつないで散歩させたいという。ご自由にどうぞ、だが、リードを首輪につなぐことすらできなかった。残念でした。
リンは今の時期、メッコよりも多く泌乳する。しかし、秋以降になり、気温が下がってくるとメッコに軍配が上がるようになる。落ち込みが緩やかなのである。同い年の6歳。この牧場を支えるスーパー母ちゃん同士であることに変わりはない。
今日のヤギ時間:トータル3時間30分
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